ディフィリッポはイタリア中部、ウンブリア州にあるオーガニックワインの生産者です。
1971年に現在のオーナーのロベルト・ディフィリッポ氏の両親がこの地でワイン造りをはじめました。
1994年にはオーガニック認証を取得してヨーロッパへの輸出も始めています。
また2009年からは本格的にビオデナミ(バイオダイナミック)農法や、馬耕、アグリフォレストリーの手法なども取り入れています。
主にサグランティーノやグレケットなどの地場品種の栽培に力を入れており、奥行きのあるクオリティの高いワインを生産するとともに、出来るだけ自然に寄り添ったワイン造りを進めていりワイナリーです。
ビオデナミ農法の取り入れ
シュタイナーによって提唱された有機微生物を使いながら土地を肥沃にすると言う考え方の農法です。
さまざまな天体の作用も農作物の栽培に取り組んでいくなど、非常に複雑なプロセスを要し、他の取り組みとはまた別で扱う必要がありますが、ディフィリッポでは少しづつこの農法を取り入れてきています。
馬耕を行う理由
ディフィリッポでは一見するととても非効率にも思える馬耕を近年積極的に取り入れています。
オーガニックやビオデナミで葡萄を育てると、どうしても畑にトラクターを走らせる頻度が上がります。そうすると土が踏み固められてしまうため、可能な限りその頻度を下げたい。
その解決策が「馬耕」と言うことになりました。
馬耕はすでに50年以上も前に廃れてしまっていたのですが、現在は当時より装備品も技術もより良いものになっています。
現在ディフィリッポには9頭の馬が飼育されていて、畑仕事の大切な戦力として活躍しています。
アグリフォレストリーという考え方
最先端でも何でもない、昔からあったけれど廃れてしまったテクニックです。
アグリフォレストリーは同じ畑の中で複数の作物や動物を育て、それらの作物や動物間の相乗効果を利用することで、資源の節約と生産効率の向上をはかっています。
ディフィリッポでは農作に必要な窒素を生み出すマメ科植物や、根で土を耕すイネ科植物を栽培しています。
しかし最も重要なアグリフォレストのリードプロジェクトは、葡萄畑でのガチョウの飼育です。
ガチョウは葡萄畑の草を食べ、施肥(糞をする)、そして葡萄とガチョウの精肉という2つの物が生産されます。
これによって肥料が節約でき、肥料の製造に使用する石油も節約できます。
また畑の草を食べて育ったガチョウの肉は非常に品質が高くなります。
このアグリフィレストリーは「自然農法は生産効率が低い」というイメージを払拭するのもで、小規模農家にフィットしたテクニックだと言えるので。
ディフィリッポの目指す自然なワイン
ディフィリッポにとってオーガニック農法は最終目的地ではなく、次のような目標に到達するための通過点でしかありません。
美味しいワインを作ること。
ワインの品質を決める最大の要因は葡萄であり、畑での一つ一つの作業がワインの出来を左右します。
特にサグランティーのやグレケットのような地場品種の出来は、栽培方法によって大きく左右されます。
土地を肥沃にして、その状態を保つこと。
これがおそらく工業型農業との最大の違いです。
オーガニック農法は土地を肥沃にして生命力(微生物や有機物)を高める一方で、工業型農業は作物の生産効率を高め、化学物質によって土地を貧しくしていく。
農業における主役を「人」に戻すこと。
化学物質や機械を増やせば人間の労力は少なくて済みますが、成果物の品質は下がります。
ディフィリッポはこれらの目標に向かって、これからも少しづつ歩みを続けていくワイナリーです。